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第36号 設備投資で事業拡大 国と地方でW(ダブル)税優遇 NEW!

2024年4月8日付納税通信第3818号 1面引用>

 中小企業等経営強化法に基づく中小企業の設備投資減税の特例が、順調に適用件数を伸ばしている。

 設備にかかる償却資産税の最大3分の2を3年間軽減するというもので、赤字企業でも恩恵をフルに受けられる嬉しい制度だ。設備投資に対する税優遇としては、同法に基づく法人税の減税もあり、両者を併用して税負担を抑えながら積極的な事業拡大に取り組むことが可能だ。それぞれの手続きで注意すべきポイントを把握した上で、受けられる税優遇を最大限に活用していきたい。

 中小企業庁は、中小企業等経営強化法に基づく償却資産税の特例を利用して取得した設備が、昨年末までに4万6千台に達したと発表した。その設備投資にかかる取得金額は約4503億円に上る。この数字は2023年4月に行われた設備投資減税の制度刷新以降、つまり1年足らずの間の実績となる。

 特例は、中小企業が労働生産性を上げるための設備投資をしたときに、設備に係る償却資産税を3年間軽減するというものだ。昨年4月に行われた制度の見直しによって、現行制度では原則として償却資産税が3年間2分の1まで減らせる内容となっている。その上で、従業員に対して賃上げを表明し、賃上げ計画が自治体に認定されると、 優遇幅が拡大された上で、優遇期間も延長される上乗せ措置が講じられた。具体的には、原則2分の1カットだった償却資産税が3分の2カットとなり、しかもその恩恵を最大で5年間受けられるようになる。岸田政権が掲げる企業の継続的な賃上げを促すため、賃上げを実施する企業にインセンティブを設けたわけだ。 

 中小企業にとってありがたいのは、賃上げ促進税制や研究開発税制といった他の減税制度とは異なり、赤字決算であっても恩恵をフルに受けられるという点だ。企業向けの特例の多くは法人税の負担を減免するものであり、そもそも利益が出ていない企業にとっては無関係なものだった。その点、固定資産税の一種である償却資産税は黒字と赤字にかかわらず課されるため、法人税を納める余裕すらない会社にとっては法人減税よりありがたい特例ということになる。

 そしてもう一つ企業にとって嬉しいのは、表明した賃上げ目標や計画書に盛り込んだ生産性向上の目標を達成することが条件とはなっていないという点だ。中小企業庁のQ&Aでは、「経済情勢等により必ずしも想定どおりの賃上げに至らないこともあるかと思いますので、それだけをもって税の追納等は発生しません」「(設備稼働後に労働生産性についての目標を達成できなかったとしても)税制適用の取り消しはありません」と、目標未達によって優遇の取り消しなどは行わないと明記している。最初から「フリだけ」のような悪品ケースは例外だが、少なくとも他の多くの補助金や助成金のように目標達成が必須条件となっていないことは、経営が厳しい中小企業にとっては助かる話だろう。

 では具体的に、優遇を受けるためにはどのような設備投資をすればいのか。対象となるのは、年平均の労働生産性が3%以上向上することが見込まれる「先端設備等導入計画」に基づいて取得された、

①機械装置(160万円以上)、

②測定工具(30万円以上)、

③器具備品(30万円以上)、

④建物附属設備(60万円以上家屋と一体となって効用を果たすものを除く)

となる。年平均3%以上の向上が求められる「労働生産性」とは、「(営業利益+人件費+減価償却費)÷(労働者数×1人当たり年間就業時間)」で算出が可能だ。この投資計画については、税理士などの認定経営革新等支援機関の確認が求められるため、先端設備等導入計画」の作成段階から顧問税理士などの手を借りるのが現実的だ。なお昨年3月までは、旧モデルより1%以上生産性が高いことや販売時期が最近であるなど、その設備が最新モデルであることを証明する工業会の証明書が必要だったが、現在は不要となっている。この償却資産税の特例の優遇を受けた上で、さらに利用を検討したいのが、「経営力向上計画」に基づく法人税の減税措置だ。こちらは黒字の決算の企業にしか恩恵はないものの、併用できれば国税と地方税でダブルの税優遇を受けることができる。

 この税優遇は、生産性が年1%以上伸びる先端設備を対象とした「A類型」、生産ラインやオペレーション全体で投資収益率が5%以上伸びる設備投資を対象とした「B類型」、DX化に資する「C類型」などに分かれ、それぞれの要件を満たした設備投資を行ったときに、即時償却または取得価額の7%(資本金3千万円以下は10%)の税額控除を選択適用できるというものだ。対象となる資産は、

①160万円以上の機械装置、

②30万円以上の工具、器具備品、

③60万円以上の建物附属設備、

④70万円以上のソフトウェア

などとなっている。

なお、B類型で求められる「投資収益率」とは、「(営業利益+減価償却費)の増加額額÷設備投資額」で算出する数字だ。いわば設備投資によって利益がしっかり上がっているかが問われるわけだ。気になるのは、償却資産税の特例を利用するために必要な「先端設備等導入計画」と、法人税の特例を適用する際に求められる「経営力向上計画」の違いだろう。両者の違いは、先端設備等導入計画が設備投資を通じて労働生産性の向上を図るための計画である一方、経営力向上計画は人材育成やコスト管理などのマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画だといえる。とはいえ両者は趣旨も似通っていて、記載内容に共通点も多い。そのため税理士などに作成を依頼する際には、まとめてお願いした方が手間が省けることは間違いない。これらの計画書は税優遇以外にも、公的金融機関による低利融資や、一部の補助金審査での加点措置といったメリットもあるため、設備投資の際に活用しない手はないだろう。

 さらに設備投資はするものの、先端設備等導入計画や経営力向上計画で求められるような生産性向上は見込めないというケースについても見ておきたい。こうした場合にも「中小企業投資促進税制」を適用できる可能性がある。

同税制は、中小企業が、

①160万円以上の機械装置、

②単品30万円以上かつ合計120万円以上の測定工具および検査工具、

③70万円以上のソフトウェア、

④貨物自動車、

⑤内航船舶

の新品を取得したときに、30%までの特別償却か最大7%の税額控除を認めるものだ(税額控除は資本金3千万円以下の事業者に限る)。優遇内容は先に紹介した特例に比べて縮小されているものの、労働生産や投資収益率に関する要件がないため、幅広い設備投資に適用しやすい制度といえるだろう。なお経営力向上計画に基づく税額控除と、中小企業投資促進税制に基づく税額控除は、合計して法人税額の20%までが控除上限となっている。税額から引き切れない部分については1年の繰り越しが認められている点も覚えておきたい。

 それぞれの優遇措置は細かい要件などが異なり、また手続きにおいて正しい順序を踏まないと設備投資をしたものの優遇を受けられないということもあり得る。設備投資は自社の資金繰り計画にも大きく関わってくるため、税理士と相談の上で、早めに計画作成に取り掛かりたいところだ。


谷の私見
 経営強化法は随分以前から制定されている法律ですが、法人のお客様もそうですが、顧問税理士先生においてもまだまだ認知が低いようです。
 生産性向上・収益力向上メーカー側が証明書類を作成してくれるA類型だと手続きは楽なのですが、会社側で自分で証明するB類型は手続きが煩雑です。税理士事務所だからと言って皆が作成できる訳ではありませんので、実績のあるプライムタックスまで是非ご相談ください。

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