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時事ネタ

第35号 能登半島地震でも効果発揮!生命保険契約照会制度

<2024年6月3日付納税通信 第3825号1面引用> 

 家族の生命保険の加入状況をどれほど把握できているだろうか。家族全員の保険証券の保管場所をしっかり覚えているという人は少数だろう。地震や台風など、自然災害による被害を受げた際にはなおさらのことだ。倒壊してしまったり、流失してしまったりした家屋から保険証を持ち出すことなど現実的ではない。こうした場合、役に立つのが生命保険協会による「生命保険契約照会制度」だ。実際に、能登半島地震の被災者の多くも、この制度によって助けられたという。

「生命保険契約照会制度」は2021年7月からスター卜した制度だ。生命保険協会に必要書類を提出すると、協会に加盟する42社に保険契約が存在するかどうかを一括で照会してくれる。相続発生にあたっては、この制度を利用するのが得策と言っていいだろう。

 制度は「平時利用」と「災害時利用」に大別される。能登半島地震でも適用された「災害時利用」は、災害救助法が適用された地域で被災し死亡・行方不明となった場合、生命保険契約の有無を協会が会員各社へ確認するもので、利用料は無料。また「平時利用」の場合であっても、利用料は調査対象となる親族等1人につき3千円だ。

 金沢市で開業する本紙読者のベテラン税理士は、実際にこの制度を使って顧問先の保険契約の有無を照会したところ、「たいへん感謝された」という。顧問先は輪島市で漆器関連の作業所を営んでいたが、今回の地震で事業主が亡くなってしまったという。ご遺族を避難所へ見舞った際、この制度があることを説明し、利用を打診した。税理士はこう語る。「生前、社長さんと懇意にしていた生保レディも、ご家族が身を寄せている避難所へ見舞に駆けつけていました。私とも顔なじみの彼女が迅速に手続きしてくれるだろうと、ひと安心でした。すると彼女がこういうのです。『先生、ウチの会社の保険については私が手続きしますが、社長さんはほかの会社の保険にも入っていませんでしたか。先生ならご存知でしょ』と。恥ずかしながら私はそこまで把握していませんでしたから、ご家族に聞いてみたのですが、どなたも知らないと。そこで生保協会の一括照会制度を使うことにしたのです」。

 すると、社長さんが2年前にテレビCMを見て資料請求した上で契鈴した少額の生命保険と、ネット系生保の保険契約が存在することが判明したという。家族からは口々に「先生、助かりました」「ありがたいことです」などと感謝されたという。

 「平時利用」でもこの制度は効果を発揮する。横浜市で食品加工業を営むAさんは、先代社長である父親が亡くなった際、生保契約の有無が分からずに苦労した。「父からは生前、生命保険に加入しているという話を聞いていたのですが、自宅を探してもなかなか書類が見つからなかった」という。契約者が保険関係の書類を人目につかない場所に保管したまま死亡してしまったり、認知症になってしまったりすると、家族は必要な書類を発見するのが非常に難しい。Aさんの会社の顧問税理士は「契約書をどこに保管しているのか、家族が知らないというケースは珍しくありません。保険料は口座からの自動引き落としになっているケースがほとんどですので、預金通帳を確認するだけでも保険の有無を推測することはある程度可能です。しかし、払込期間が満了していたり、解約せずに払済保険に変更したりしていると見落としてしまうかもしれません」と指摘する。

 この税理士はこれまで、契約ごとに保険証券や保険会社からの通知を探し、通帳や確定申告書もチェックしたうえで契約者と相続人の続き柄を証明する書類を揃え、保険会社1社ごとに契約の有無を確認していたという。だが、生命保険契約照会制度によって、協会へ必要書類を提出すると加盟42社に一括で照会してくれるようになった。Aさんのケースでもこの制度を使い、無事に保険の存在を確認するごとができたという。

 家族がどの保険会社と契約していたのかが分からなくても協会経由で一括照会し、約2週間で契約状況を把握できるようになったわけだ。費用は1人につき3千円。旧姓を含む複数の契約があったとしても、この費用は変わらない。ただし、この制度は誰でも利用できるわけではない。一括照会ができるのは、①家族が死亡した、②家族に認知判断能力の低下があったことが認められる、③家族が災害によって死亡もしくは行方不明となった―のいずれかのケースに限られる。

 生命保険を照会する目的が「家族の死亡」である場合、手続きを行えるのは、①照会対象者(被相続人)の法定相続人、②法定代理人、③任意代理人、④被相続人の遺言執行人に限られる。

 また、契約者の「認知判断能力が低下している」場合は、①照会対象者の法定代理人、②任意後見制度に基づく任意代理人などとなっている。

 生命保険金は、その保険契約の受取人が保険会社に請求をして初めて受けとることができるものだ。被相続人が家族のために高額の生命保険に加入していても、その契約が存在すること自体を知らないまま保険の時効である3年を迎えてしまうこともあり得る。契約照会制度はこうしたトラブルを未然に防ぐためのものでもある。

 ただし、協会に加盟していない共済や据置保険契約(満期がきても保険会社に預けたままの保険金)などは一括では照会できないので、まずは銀行口座の引き落とし履歴や保険料控除証明書などによって、契約の有無を調べておきたい。

 一括照会制度は申告期限までの時間がわずか10ヵ月と限られている相続発生時に効果を発揮する。手続きに要する時間を短縮するためにも、積極的な利用を検討するべきだろう。

谷の私見
 これはとても便利な制度だと思います。相続の際、残された人たちが書類集めや、財産調査に苦労している場面を何度も見てきました。生命保険についてはこのような制度が出来て便利になってきましたが、証券会社に預けている金融商品なども同じように一括照会できるようになればよいですね。

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