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<2023年1月16日付 納税通信 第3756号 1面引用>
政府はこのほど、融資を受ける際の経営者保証の解除を抜本的に促すためのロ—ドマップ「経営者保証改革プログラム」を公表した。解除条件を示した従来の「ガイドライン」では、適用するかどうかが金融機関に委ねられており十分に活用されてこなかったが、新ルールでは一定の条件を満たした事業者については金融機関に有無をいわせず解除できるようになる。さらに政府内では現在、会社の知的財産権や技術力、将来性といった"無形資産"を経営者保証に替えて担保にできる新たな保証制度の検討も進む。経営者による個人保証を前提としてきた日本独自の融資慣行が大きな分岐点を迎えている。
中小企業が金融機関から融資を受ける際には、経営者による個人保証を求められることが多い。金融機関としては融資の焦げ付きのリスクを抑えるためだが、一方の経営者は当然ながら個人資産を失うリスクにさらされる。
東京商エリサーチによれば、倒産した企業の約7割で経営者個人も自己破産に至っているという。自己破産すればその後は新規融資を受けづらくなり、新事業での再起は極めて困難な状況となる。また経営者保証のリスクを理由に後継者が決まらないなど事業承継のハードルにもなっており、経済産業省は「後継者への円滑な事業の引き継ぎを促すためには経営者保証制度のあり方を見直す必要がある」と指摘してきた。
政府の要請を受けて全国銀行協会と日本商工会議所が規定した保証解除の指針「経営者保証に関するガイドライン」の運用が始まってからすでに9年が過ぎたが、十分に機能しているとはいい難い状況だ。金融庁によると昨年3月までの半年間に実施された民間金融機関の新規融資の64%でいまだ経営者保証が求められている。前年同期比で2%減とわずかに改善したものの、いまなお多くの融資案件で経営者保証が必要となっているのが実態だ。また政府系金融機関でも半数近新 融資で経営者保証を求めている。
経営者保証の解除が進まない実態を踏まえ、抜本的な状況改善を促すために政府がこのほどとりまとめたのが「経営保証改革プログラム」だ。「経営者保証に依存しない融資慣行の確立を加速させる」(経済産業省)ことを目的に、大きく分けて3つの新ルールを段階的に実施していくという。
1つ目の新ルールが、無担保の創業融資制度の新設だ。創業5年以内のスタートアップ企業を対象に、3500万円までの融資については全額保証かつ無担保で借りられるようにする。3500万円を超える借り入れについても、商工組合中央金庫によるスタートアップ向け融資では経営者保証を原則廃止にし、将来的にはその他の政府系金融機関でも基本的に経営者保証を求めないようにしていく方針だ。新制度の開始は今年3月の予定となっている。
2つ目の新ルールが、経営者保証を要求する金融機関に対する規制の強化だ。経営者保証契約の締結時に、事業者や保証人に対して「どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか」「どのような改善を図れば保証契約の変更•解除の可能性が高まるか」を具体的に説明するよう金融機関に義務付ける。また、説明内容の記録や件数を金融庁へ報告させる。さらに、金融庁に「経営者保証専用相談窓ロ」を設置し、金融機関の対応実態についての経営者からの相談を受け付け、必要に応じて各金融機関に指導も行っていく方針だ。従来の「ガ イドライン1はあくまで民間団体の指針であり努力義務を示したに過ぎなかったが、今回の「改革プログラム」は政府が金融機関に対して具体的な義務を課した点が特徴となっている。一連の対応は、4月以降、段階的に金融機関に義務付けられる。
そしてあらゆる事業者に直接関係するのが3つ目の新ルールで、それは既存の保証を外しやすくする制度の創設だ。売掛債権や棚卸資産といった流動資産を担保とする融資については、経営者保証の仕組みそのものを廃止する。また、土地や建物、機械といった固定資産を担保とする経営者保証についても、「法人から代表者への貸し付けがない。決算書類を金融機関に定期的に提出しているといった経営者の取組次第で達成可能な要件」を満たす事業者については、経営状態に応じた上乗せ保証料(0.2%以上)を支払えば経営者保証を解除可能とする。新制度は来年4月から導入する。
もっとも、3つ目の新ルールにより経営者保証を解除できるのは一定の条件を満たした事業者に限られるわけだが、政府内ではさらに、経営者保証に代わって会社の知的財産権や技術力、将来性といった"無形資産"をも担保にできる「事業成長担保権」の創設に向けた検討も始まっている。 現在は金融庁と法務省が連携して制度設計に向けた議論を進めており、早ければ今年の通常国会で法案を提出する計画だ。
知財や技術力も担保に
事業成長担保権では、事業から生み出される将来的なキャッシュフローを担保として認めるようにするという。現行の担保制度では民法上の抵当権や質権に基づいて不動産や金融資産といった有形資産を担保にできる一 方、知的財産権や技術力、将来性といった無形資産は法的に入担不可能となっている。そのため金融機関ば特に中小企業向けの融資案件で経営者の自宅や土地といった個人保証に依存してきたが、政府は事業成長担保権の制定により、事業拡大のための成長資金に加え、事業承継や事業再生といった場面でこれまで資金供給を受けにくかった担保の乏しい企業も活用 しやすくするという。
すでに事業者の技術力や将来性を評価して融資を実行する金融機関も出てきている。横浜銀行では昨年8月、中小企業向けの新たな融資商品「SDGsフレンズローン・ネクスト」を発表した。企業の将来性を国連の定めた行動目標「SDGs(エスディージーズ)」にのっとった独自の指標で評価し、①SDGsに基づく課題分野の設定、②具体的な施策の検討、③施策・KPI(指標)の決定―を実施した企業に対して運転資金や設備資金として無担保で1千万円以上を融資する。年1回のモニタリングを実施し、一定の達成率を満たした企業に対しては融資枠の拡大などにより優遇もするとしている。同様の融資制度は、静岡銀行や京都銀行、武蔵野銀行なども設けている。
経営者保証の解除が実現できれば、積極的な事業展開や将来的な事業承継を円滑にできるようになるという経営上のメリットになるだけでなく、社長個人の人生プランを脅かすリスクを大幅に削減可能だ。新制度の活用に向け、顧問税理士への相談や金融機関との交渉をしっかり行っていきたい。
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