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<2022年11月14日付 納税通信 第3747号 2面>
政府税制調査会(中里実会長)で、多様な働き方を促進するための手立てとして、退職金への増税が検討されている。
近年、高所得者の退職金に対する課税強化が続いており、再び"経営者いじめ"が始まったものといえそうだ。
2022年10月に開かれた政府税調の会合では、「多様な働き方を選びやすくする」との狙いのもと、所得税のあり方を議論した。
現在の退職金に関する税制は終身雇用制度が前提となっており、勤続20年を超えると1年あたりの控除額が増える仕組みとなっている。
会合ではこの仕組みが転職をためらう要因になっているとして、委員からは「控除は勤続年数で差を設けず一律にすべきだ」といった意見が出た。
中里会長は総会後の会見で「長期的な人生設計の前提となる制度の安定性というのは一定程度重要だ」と述べ、既存の制度を前提に暮らしてきた層に配慮が必要との認識を示したものの、今後も「働き方の多様化」のスローガンのもと、増税方向に話が進んでいく可能性は決して低くない。
退職金は、会社として多額の費用を計上できるうえ、受け取る側も、
①退職所得控除
②2分の1課税
③分離課税
と3層もの税制優遇を受けられ、さらに株価を引き下げる効果もあることから事業承継対策をも含めた経営者の節税対策の王道だ。
だがここ10年ほど、退職金の税制を巡る課税強化が続いている。
2012年の税制改正では、多数の関連企業に短期間で役員に就いては退職する「渡り」を防ぐため、在職期間が5年以下の役員が
課税対象額を2分の1とする退職所得の優遇措置(2分の1課税)の対象から外された。
さらに2021年の改正では、在職5年以下の役員以外についても、控除後の退職所得金額が300万円を超えた部分に限るという条件付きながら、
2分の1課税の対象から除外となった。
2021年度与党税制改正大綱では、諸外国の制度を参考にして退職金を含む老後の資産形成に関する税制の抜本的な見直しを行う方針も示された。
参考にするとされる諸外国では、そもそも米国のように退職所得控除のない国もある。
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